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2022年12月18日

ゲスト講師による「AIが生み出す新しい職業」と題する講義の実施報告

本学で吉田智子が担当する「インターネット社会論」の授業では、毎年この時期、スペシャルゲスト講師による講義を実施しています。

スペシャルゲスト講師とは藤田昭人さんで、現在は音声チャットボットの事業などに携わっておられます。昨年度は、この授業のために「AIのトレーナーが体験できる、読み聞かせチャットボット」を制作してくださり、その授業実践を私たちがまとめた論文はCIECという学会で優秀論文賞を受賞しました。

■論文賞 ◎優秀論文賞 吉田智子(京都ノートルダム女子大学)、藤田昭人(プログラマー)
「チャットボットのルール記述を利用したAIとプログラミング教育の試み―初等中等教育での論理的思考力育成利用に先駆けた文系大学での実践報告―」

【授賞理由】本論文では童話の読み聞かせをする音声チャットボットを用いた教材の開発試行を行っている。チャットボットのルールを記述して返答させるという教材は、学習者にとって興味深く、なおかつ日常生活においてはブラックボックス化されてしまうAIについて関心を持つ第一歩となる。さらに、初等教育にも展開可能性が期待できる。(コンピュータ&エデュケーション,Vol.53 , 2022.12.1発行、96ページより)


さて、4回目となる2022年度の藤田さんの講義タイトルは、「AIが生み出す新しい職業とは」でした。

・「次世代AIスピーカー」とは
・最新の音声合成技術
・AIが生み出す新しい職業

という3つの項目をデモを交えて話されました。

まず、「次世代AIスピーカー」が、従来のAIスピーカーと違う点を挙げられました。

その一つとしては、その人が関心があるテーマを選んで、話しかけるような「聞き上手な点」などが挙げられて、人の話を否定せずに肯定的に聞く、つまり傾聴対話ができるようなものが例として示されました。リラックスして人間がスピーカーに対して話せるような工夫ができると、高齢者でも使いたくなるのではないかということでした。



次に、最新の音声合成技術の概要が説明されました。

「音声コーパス」から「統計モデル」を機械学習の機能で作っておきます。そうすれば、「統計モデル」に「テキストデータ」を与えれば、「音声データ」が自動生成できるようになるからです。音声合成のシステムには、無料で使えるものとして VOICEVOX、SHAREVOX、COEIROINK などが紹介されました。

デモとして、COEIROINK を使ったもの、SHAREVOX を使ったものを見せて下さいました。読み上げる「テキストデータ」には、最新の「京都検定」の最初の問題と4つの選択肢が使われていました。(これは、この講義の主な受講生が国際日本文化学科の学生だということで用意してもらいましたが、残念ながら受講生の中には「京都検定」の資格に挑戦したことがある方はいませんでした。)

「音声コーパス」には、プロの声優さんがボランティアで作ったものが使われているそうで、自分で好みの声優の声を選ぶことができるそうです。「つくよみちゃん」https://tyc.rei-yumesaki.net/ に読ませたものが、かなり聞き取りやすかったです!


そして最後が、「AIが生み出す新しい職業」に関しての話でした。

ボーカロイド・プロデューサ(ボカロP)出身者が、音楽業界で大活躍していることが典型的な事例だとして、「人間がAIを補助すること」を例に挙げて、人間が介入することでシステムを良くすることの重要性の話は、とても興味深かったです。

人間には不自然に聞こえる、ボーカロイドの歌をより自然になるようにチューニングする人たちは、従来の音楽制作を熟知しているからできるのだというのも、なるほどと思いました。もともとその分野に詳しい層の人たちが、新しい技術に詳しくなったり、その分野に詳しい人が技術に詳しい人と結びつくことで、新しい世界(商業分野)が生まれて発展するわけですね。異分野の人とのコラボレーションの大切さを痛感しました。

「AIだけで完結するサービスは社会に定着しないので、人間との協業が有効な事例に対価がつき、ビジネスになって生き残っていくのではないか。研究者、工学系の人は技術に注目するあまり、人間が関与しない方向に行ってしまいがちだが、人間がそれを道具として便利になっていくものにこそ、社会を豊かにするものとしてお金がつく。機械学習を基本に作られたシステム、プロダクトそのものは社会に定着しないように思うが、楽しい会話をプロデュースするようにチューニングされたものに対しては、それをチューニングした人にお金を払うようになり、それがAIが生み出す新しい職業、といえる。」


というのが、藤田さんが話された「AIが生み出す新しい職業」の結論だと、私は理解しました。そして実際に、そのようなシステムを企画・設計されているそうです。例えば、特定の高齢者に楽しいと思える会話をしてくれる次世代AIスピーカーなど・・。私は今は普通のAIスピーカーも愛用していますが、もっと発展した次世代AIスピーカーが仲間入りする日々も楽しみです。




以下に、学生からのコメントをいくつか紹介しておきます。

「ボーカロイドやボカロPさんについてもともと興味関心はあったものの、音声合成の歴史などについては全く知らなかったので、とても聞いていて面白いと感じました。」

「音声合成システム等については前から興味があったので時間がある時にちまちま調べていましたが今回の授業でかなりわかりました。」

「ボイスロイドの動画をよく見るので、つくよみちゃんのことは知っていました。個人的にはミリアルや小春六花、花隈千冬、京町セイカなどが好きです。」


学生の皆さんにとっては、この分野のAI(音声合成技術やボーカロイド)は身近な話題だったのですね。ちなみに、ボイスロイドとは、読み上げ用音声合成ソフトの一つの製品名だそうです。

藤田さん、お忙しい中、ノートルダムの学生に興味がありそうなデモを作成しての最先端の講義をありがとうございました。

(よしだともこ)


<追記>
2020年1月9日に、藤田さんが「人間と人工知能の幸せな関係」というタイトルで講義されたページを以下に紹介しておきます。
この時には、AIスピーカーとして Amazon Alexa を持って来られてオリジナルなスキルのデモをされました。これが元祖、AIスピーカーですね。あの時からです。我が家にAlexaが仲間入りしたのは。今回の講義を聞き、約3年で技術はかなり進歩したなと思いました。
https://notredameningen.kyo2.jp/d2020-01-09.html

以上  


Posted by ndsi  at 09:00Comments(0)授業報告研究活動産学連携