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2023年01月13日

AI について学生さんに伝えたいこと

社会情報課程教員の北村美穂子です。私の専門であるAIに関して、本学の学生に伝えたいことを書いてみました。詳しく書いたので長くなってしまったのですが、最後まで読んでもらえると嬉しいです。

1990年頃、AIはエキスパートシステムと呼ばれていて、人間がやっていることをコンピュータでやらせるためには、人間が行なっている思考をルールにすることに注力していました。

例えば、私の専門の機械翻訳では、日本語から英語に翻訳する場合、日本語をまず、単語単位に分割し、文法構造を把握し、その日本語の文法構造に対応する英語の文法構造に変換して、日本語に対応する英語の単語や熟語を割り当てていくというやり方です。

文法規則を使った日英翻訳の例


その当時は、人間の思考を記述しやすいプログラミング言語でプログラミングすることで、研究者や開発者は、いかに人間の処理の精度に近いAIを作ることができるかを競っていました。(私もその1人でした。)

このように、ルールを人間がガシガシ、ガシガシ書いていたというところから、AIはスタートしているのですが、近年、そういう風に人間がいくら書いても、書いても人間の頭の中は模倣することはできないということがわかってきました。現在では、ビッグデータと呼ばれる人間が持っている様々なデータを、とりあえずコンピュータの中にぶち込んでみて、そこからコンピュータ自身が規則を見つけだす方法が主流になりつつあります。(コンピュータが、それ自身でまるで人間が学習するのと同じように、大量のデータから学習していき、だんだんと人間と同じようなことができるようになるというやり方です。この技術を機械学習と呼びます。)
今年度の「AIとデータサイエンス入門」の講義のようす
今年度の「AIとデータサイエンス入門」の講義のようす

現在、AIの中でも、自動翻訳などの言葉を扱う処理の技術革新が急速に進んでいます。しかし、それは、コンピュータが勝手に賢くなったわけではなく、両親が赤ちゃんに言葉を教えるように、人間がコンピュータに様々な手段や形式で知識を与えることによって、今では、人間並み(それ以上?)の自動翻訳や質問応答ができるようになったのです。これが意味することは、赤ちゃんが成人になっても何らかのサポートが必要なように、AIも賢くなって終わりなのでなく、これは間違っているよと助言をしたり(AIの場合ではデータを削除したり)、正しい判断ができなくなった時には仕事をさせない等、何らかのサポートが必要となります。AIと共存する社会のために今まで存在していなかった仕事が今後生まれると予想されます。学生さんの中にはそんな仕事に就く人もいるでしょう。

 自動運転や自動翻訳などをはじめとしたAIが、身の回りで人間の代わりをしてくれることは、普通に生活している中でも、今後ますます増えていくことでしょう。その時に、学生さんが、「中身は知らないけど、便利だから使っているだけ」という考え方から、「これって、どんな風に動いているのかな」と考えられるようなきっかけ、つまり思考のヒントのようなものを学生さんに与えられたらいいな、と思っています。

そのためには、AIが最初はルールを書く所からスタートして、今は膨大なデータを与える方向に変わってきたというAIの歴史の知識が必要となるでしょう。また、スタートした頃の技術が現在のAIのベースとなっており、基本技術の知識も不可欠です。1990年代からの30年以上、この分野にいるものとして、学生さんに寄り添って、丁寧に話をしたいと思います。こころを持ったロボット

(北村美穂子)


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Posted by ndsi  at 18:59 │Comments(0)授業報告

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